マスカット
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巨峰よりも
マスカットが好きだ
好きで好きでたまらない
一年に一度だけの
食べる恋人
なんといっても ぶどう狩りで
ぶどう園へ行き
熟したてのマスカットを味わうことだ
果物屋やスーパーにならんでいるものでは
ほんとうの味はわからない
天と地ほどの違いがある
一度食べたら
もうおかしなマスカットはいらない
家から15kmくらいのところに
秋になるとよく行く ぶどう園がある
サイクリングをかねての
ぶどう狩りだ
ぶどう園のおばさんと すっかり友達になり
量り売りのぶどうを まけてくれたりする
ちょうど五十肩で悩んでいたとき
相談にのってくれた事がある
その話とは---------
ぶどう園の仕事は過酷で
ぶどうの手入れで
切り取ったり もぎ取るときは
いつも 両腕を高く上げるので
ぶどう園で働くひとは 必ずといってよいほど
五十肩になってしまう
そんな時は
近くの整体師のところへ行く
サウナで十分に肩をあたため
肩を強く引っ張る
一瞬のことらしいが
激痛がはしるということだ
これで治ってしまうというが
おそろしい感じがして
結局その整体師のところへは
行かなかった
ぶどう園へ行けば
こんなふうに苦労して
大切に手入れされ
やさしい親なる木に
熟すまで育てられたマスカットたちが
黄金の一粒一粒をかがやかせ
秋の木漏れ日のなか
涼風に吹かれて 美しくゆれながら
いつも私を 待っている