残像する花束の
霜天

そういえば、と

一行で綴られた手紙を
まだ読み終えていないことに気付く





しん、と
静まり返った日には
覚めない雨が降っていなくても
どこかで
音がするものだから

窓を開けると
決まって濡れてしまう



今日も
宛先不明で手紙が戻ってきてしまった
よく見ると
切手も貼られていない



テービルの上で花瓶の
動かない花束が残像して
まぶたの裏のあたりで
巻き戻しと再生を繰り返している
君が抱えていたものと
同じ色を選んだつもりだけれど
実を言うと
その色をよく思い出せない


電車が通過して
がたがたと僕らは揺れた
明日に繋げるためにとりあえず眠る
テーブルの上で花束が色褪せないのは
きっと、この部屋が
少しだけ冷たいせいだろう



しん、と
静まり返った日
今日も手紙は届かなかったみたいだ


自由詩 残像する花束の Copyright 霜天 2005-03-25 00:07:56
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