街灯
言狐

紫と茜が交じる時間帯、ぽつりと街灯がひとつ灯った。
誰も通らないような道に、ひっそりと光が現れる。
それをぼくはみつけ、煙草が吸いたくなった。
遠慮がちにそれに近づいてぼくもひとつ、煙草に火をつける。
間をおいて。
ふーっと煙を吐く。
風はなく、煙はいつまでも目の間を漂っていた。
誰に必要とされるでもなく灯る街灯。
誰に必要とされるでもなく、息をするぼく。
街灯は孤独だ。いや、街灯は孤独なほうがいい。
いくつも並ぶとうるさすぎるから。こうしてひとつ、ぽつりと灯っているくらいが丁度いい。
言葉も同じだ。言葉も多すぎない方がいい。多すぎるとうるさくなるから。
だが、街灯も、言葉も相手がいなければ存在しないのと同じことではないか。
照らす相手がいなければ。送る相手がいなければ。
しかし、街灯はひとりでに灯る。ぼくも息をしている。
こうして、誰かが通るのを待っている。
嗚呼、ぼくと同じだ。
もうひとつ煙草を取り出し火をつける。
煙がゆっくりと空に昇っていった。


自由詩 街灯 Copyright 言狐 2018-09-17 21:34:18
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