夏の忘れ物
長崎螢太

1.蝉の脱け殻

階段を登っていると、カサリ と音がした
足もとに目をやると、蝉の脱け殻が潰れていた
私はそれが、崩れてしまわないように、
そっと、ポケットに仕舞った



2.虫籠

川土手の道を歩いていたら
道横の草むらに虫籠が落ちていて、
中を覗くと
アイスキャンディーの棒が、一本、入っていた
当たりではなかったのに



3.花火

公園の隅にひとつ、花火の燃え残りを目にした
何処かで、子供の笑い声が聴こえた
気がした



4.麦わら帽子

川面を見ると、麦わら帽子が水面を
滑るように流れてきた
あの子は、何処まで、旅をするのだろうか



5.私
 
毎年、夏が終わると、なにか忘れ物をしている
気持ちになる
だけど、それが何なのか思い出せたことは、
一度もなかった
 
 

 

 
 


自由詩 夏の忘れ物 Copyright 長崎螢太 2018-09-16 11:51:25
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