ラ・ラ・ラ族
るるりら

お義母さま
あきの こごえです
朝風に 精霊バッタの羽音が
そっと 雫を 天に すくいあげています

何が終わったのでしょう
もう はじまりはじめの空
むかしむかしの反対のはじまりのはじまり
めちゃくちゃダンスを夢中で踊る子供らの真似をしたがる
私のからだは重いです けれど
私と共に たふたふと生き物のように動くものがあります

天女の羽衣が 頬を そっと かすめました
透けて見えたのは
しろいレースのアンブレラをさした少女のような貴女
素足が
五ミリは 浮いています

あなたの お父さまがいらっしゃいます
どこへも 逝かず
六歳のままのあなたのそばに ずっといらっしゃったのです

ゲンバクのことを人々が忘れると だれかが言っています
わすれられるものなら忘れたら いい
口にしたくなければ 口にしなければ いい
とてつもないひかり ただただ臭かった廣島の町
着ていた服どころか皮膚までも 剥ぎ取られて
食べるものもなく 彷徨う人々
毎日毎日 煎餅布団と寝た貴女は
しつこいくらいに
いつも わたしのふとんが ふかふかであるように心配してくれた


高窓から さしこむ光に
綿毛が舞い上がるように
浮いて かろやかに歌うのは
少女のままの貴女
うつくしい裸族としての朝
わたしも空をとぶ


自由詩 ラ・ラ・ラ族 Copyright るるりら 2018-08-30 14:17:35縦
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
Democratic Poems