ガヴォット
ヒヤシンス
神様、どうか私を見捨てないで下さい。
心に悲しみ満ちて、静かに訪れる夕暮れに頭を垂れる時、
一人きり、森の奥深くにある小さな教会に足を運ぶ。
重たい扉の向こうに見える木の十字架。
三人並んで祈りを捧げている外国人の親子連れ。
幼い二人の子供たちが母親の真似をする。
席に座った私も彼女らの真似をする。
神様、どうか私を見捨てないで下さい。
程なく、親子連れは去っていく。
私をどこまでも取り残して。
醜く色付いた心の影を捨て去ろう。
純白に、そして透明に。
神様、私はやりなおせるでしょうか。
外の気配を映し出すステンドグラス。
私の心はどこまでも穏やかに。
頭の背景にはバッハのガヴォット。
厳かな雰囲気が胸を打つ。
神様、私達家族をどうか見捨てないで。
クールを纏った激情。
一枚ずつ爪を剥ぐような、、
目の玉を抜かれるような、、
裏切り、陰口、理不尽、、
神様、どうか私を見捨てないで。
外はすっかり暮れていた。
もと来た道を辿るつもりはない。
森の中、明日への光を頼りに帰ろう。
我が家に帰ろう。
神様、ああ、私の神様、感謝しています。