*
私がひとり降りた夜
バスは静かに荒く息を吐き出しながら
また次の者を乗せ降ろしして
それ自体 拍動しながら
もう 見えなくなっていく
のこされた私は
安堵を荷物に 歩き出す
足元には
まだ、
*
りんごが
ぼとん
と
手から
落ちた
地面の
振動
赤く 噴き出す
*
温かい掌に
とつぜん氷をつかんで握りこむ
溶けていくほど おたがいの別れを どきどきと感じている
*
白い躰のあなたを
肌の色のある私は
もろうでを開き ぎゅっと密着する
私の中に あなたの水脈が広がり
うねりながら
攪拌していく
あなたは一定の規則正しいリズムで 動いて 動いて
干からびたカナブンのように 突然終わった
まだ私のからだにある心音の余韻、
鼓動