胃癌くん
八木ヒロマサ
胃癌くん
わたしの肉体を蝕む
胃癌くんになら
なんでも
話ができそうな気がするよ
なんせ、わたしの
死、を握ってるのだから
事故や事件に巻き込まれて
死ななければ、
胃癌くん、が
わたしの体内で
死、を突きつけてくるよね
だから、胃癌くんには
わたしの全てを
晒そう。
闘いながら、
共に、胃癌くんと
仲良くなれれば と
願いながら
痛み、恐れ、不安を
乗り越えてみせるよ
わたしが生き抜く。そのために
胃癌くんは、わたしに
教えてくれる
生きる大切さ。
心配してくれてる人達への
感謝。
わたしは、こんなにも
幸せ者だったのか、と
改めて、知らされ
生きる喜びを教えられた。
肉体とは、誰もが いずれ
お別れしなくちゃならない
最期は悔いなく、と言うけど
ほんとうに悔いなく、逝けるのか
闘い抜いて、抜けるような
青空に染まって、とびっきりの
笑顔で、我が人生に悔いなし。
で、白い灰になり
さようなら、と自分に叫ぼう。
それまでは、好きなことを
おもいっきり楽しめばいいさ。
自由に、縛られることなく
ねえ、胃癌くん。