砂と雫
邦秋

僕が空白ならば時間は通り過ぎる
首元を擦り抜ける絹の滑らかさで

 例えば陽の光が円を描いた日の
 夜空に煌めいた美しい光も

 瞬きの間も世界は動く
 次の季節の前に今を残して
 風で消えない足跡を刻み
 それぞれが憶えている景色を愛して

 僕に降る砂を零さないように両掌重ねて受け止めていたい
 幸せに何かを失う前から気づいていられるよう
 砂時計よりも、もっと特別な一粒を積み上げる
 そしていつか現れる
 この「僕だけに見える砂丘」は虹色に染められて

 例えば一つだけの傘に入るために
 あなたと近づけた その偶然の雨も

 歩調を合わせ前を見て進む
 水の中で舞う二人の呼吸のよう
 細かな霧が拡げる記憶も
 波紋の繋がり方で輪を描くよ

 声が聞こえてる 姿が見えない
 その音を雫にして残していたい
 月並みの言葉に潤いを与える波に浮かんでたい
 窓の朝露も、その涙も、一粒を大事に集め
 溢れ出せば広がる海
 日常という優しい水面に触れ続けたい


自由詩 砂と雫 Copyright 邦秋 2018-07-11 12:16:33
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