父さんをすてた日
田中修子

瀧村鴉樹『胎児キキの冒険』
ふんふんふんふん

どうしたってさ いろいろあるよね
びっくりさ

父さんに捨てられた
ぼくが
父さんを捨てたひ

ね、笑うかい

イデアを宝石と呼ぶ人*1がいてぼくは
すっかり感心してしまった

ぼくのうつくしいイデアたち
言葉の浜辺でひろいあつめ
お気に入りのブレスレットにした
満月の夜には光にさらして
それぞれに浮かぶ文字

暴食 色欲 強欲 憤怒 怠惰 傲慢 嫉妬

……色とりどりの
  底にひそむやさしいもの……

抱きしめよう だって泣いているじゃないか

笑うかい

永劫回帰 天にもゆかず つぎの生にもゆかず
いまのこのぼくの人生が 永遠につづくとして

縋らぬように

もう少し待ってください
革命の見果てぬ夢をみて子を捨て
妻も 友も さきに逝き
老いた体にふときづいて
おそろしがっているぼくの父さん!

あなたをゆるす日を
ぼくがあなたの太母になるというのか
(だから母さんはぼくを殺したのだけれど)
それでもやがて
その青い鳥の羽ばたく音は
きっとおとずれるだろう

……母さんの死骸にありったけ
  そそいだ
  ぼくのひかる血を目印にして……


*1 瀧村鴉樹『胎児キキの冒険』



自由詩 父さんをすてた日 Copyright 田中修子 2018-07-07 23:46:03縦
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