鬼の庭
木立 悟
三つの水滴が
顎にいつまでも残り
笑っている
泥の泉をすぎる月
夢の踊り場
夢の重い蓋
彫像 銅像
沈没船を照らす自画像
かがやくものが運ばれてくる
日陰を削ぐ荒地へと
何も無いところへと
骨だけのものが運ばれてくる
何処かで生まれ
何処かで死ぬ鹿のための言葉
誰も知らぬまま
土になる言葉
かがやくものを捨てたあと
見えてくる多くの音があり
それぞれがそれぞれのままなのだと
突き刺すように突き刺してくる
この夜にはこの暗がりには
無音が足りない
突起に満ちた 刃に満ちた
無音が足りない
手にした紙の下半分に書かれた
武骨な言葉の体が燃え出し
尽きることなく燃えつづけながら
何も無い場所を照らしてゆく
光の方へ痛みの方へ
水銀の柱は連なっている
花の鬼や蝶の鬼
羽の鬼が笑う白い中庭に