大覚アキラ

触れる、
それだけで世界がやさしい光を帯びていくその時に、
わたしは目を開いていたい。

わたしのすべてを使って、
おまえの重さを、柔らかさを、温かさを、
はかるように、ためすように、たしかめるようにしながら、
絶えず冷静な観察者でありたい。

わたしの爪が、指が、掌が、舌が、頬が、唇が、髪が、
おまえの白くなめらかな肌の上に、
誰も知らない世界の地図を描いていくのを、
白痴のように見つめる目撃者でありたい。

肌と肌の間を隔てるものをすべて脱ぎ捨ててしまって、
二人して愚かな子どものようにただ欲しいだけ
抱き合い、与えあい、奪いあいながら、
おまえの姿をこの目に焼き付ける記録者でありたい。

おまえが、おまえでいられるぎりぎりのところに
爪先立ちで立っているその先に、
ぽっかりと口を開けている肌色の深淵を
おまえといっしょに覗きこむ共犯者でありたい。

触れる、
そこからはじまる世界でおまえとふたり、
わたしたちは目を開いていよう。


自由詩Copyright 大覚アキラ 2018-06-26 20:38:14
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