こんな雨の日に泣きたいのは気のせいだと思った
ベンジャミン

こんな雨の日に泣きたいのは気のせいだと思った

この間、久しぶりに友人と飲んだとき
ずいぶんとしあわせそうな顔になったじゃないかと言われた
そのセリフの半分が
励ましだということを
僕は知っている
世知辛い話を笑い話に変えながら飲むと
酒の減りが早いのは当然だろうか
友人はぐいぐい飲みながら
話の方向を自分へ
そして
僕へ
近づけてゆく
僕が黙りそうになると
友人はけたけた笑いながら冗談だと言う
そのセリフのほとんどが
気遣いだということを
僕は知っている
昔話をする
昔から今に至るまでの
お互いをちゃかしあいながら
これから先の愚痴を少しだけこぼす
そうやって
グラスが空になる頃には
脈絡もなく
まぁ 頑張ろうかと言いあって
店を出る
別れ際
無理をするなよと言い残す友人の
そのセリフの全部が
優しさだということを
噛み締める

今日は雨だ

いろいろな人の
いろいろな優しさを思い出しながら
それを涙に変えてしまわないように
傘もささず
雨にうたれてみる


    




自由詩 こんな雨の日に泣きたいのは気のせいだと思った Copyright ベンジャミン 2005-03-22 16:52:15
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