塔と鐘
ヒヤシンス
青く澄み渡る空の下、高原の塔の前に立つ。
息を吸い込むたびに体が宙に浮いてゆく。
時代を遡るかのように。
過去を愛せるようになればきっと未来も明るくなるだろう。
ラベンダーを腕一杯に抱えた女の子は私の祖母かもしれない。
空の彼方から私を呼ぶ声が聞こえる。
大地と宇宙の境目に私は立っているのだ。
爽やかに降り注ぐ日光に優しく包まれる初夏の午後。
私の努力は報われる日を待っている。
永遠に流れる時の中で静かに待つのも良いだろう。
そうして私は努力を重ねる。
いつしか高原に寝そべりながら私は耳を澄ませている。
遥か昔に建てられた塔の前では自然の音色すら心地良い。
眼下に広がる雲海の中から遠く美術館の鐘が鳴る。