魔女、かよ?
秋葉竹
それを魔女という、あたしは正しい。
それを人柄というんだろうか?
やることにそつがないんじゃないんだ。
やることに一生懸命なんだ。
それが見て取れる、すべての行いに。
とても器用で、物事をそつなくこなす人間て、いるよね。
彼女は全然そんなのじゃないんだ。
いつもひたむきで、自分の欠点を理解して、誰のことも尊んで、いつもは1歩引いているんだけれど、そこでそのピンポイントをしないと全てが回らないときには、誰より率先してその嫌なことさえやり遂げてしまうんだ。
一体誰が。
誰が彼女のことを、嫌うことなどできるだろうか?
嫌うことなどできるだろうか、この、このだよ、この心が曲がりに曲がったあたしでさえ、彼女のことを好きになってしまうんだよ。
彼女の所作動作や笑顔だけじゃなく、怒った顔や、憂いの顔まで、大好きになってしまうんだ。
みーんなに好かれて、あたしの想いなんて、よくある好意のひとつでしかないはずなのに、
『ありがとうございます』ッて、
眼を、ちゃんと見て、両手をしっかり、握りしめて、言ってくれるんだ。
あたしの、握りしめられた手が
きんちょう?
よろこび?
あいじょう?
なんでかなぁ?
汗がにじんじゃって、恥ずかしい。ったら、ない。
それで、耳もとで、そっと、ささやいて、くれるんだ。
『好意を、もってます。
あ、恋愛とかじゃあ、ないので、
ご安心ください。』
こ、この〜〜。
汚ね。
これは、汚すぎるだろ?
これは、『手』なのか?
みんなに、やっちゃってるのか?
あたしだけじゃないのか?
これで、ここで別れた後も、
ずーっと、この女のこと、
考えつづけてしまうの、決定じゃない?
きたねーって。
これ、絶対、わざとで、『手』だよな?
でも、問題は、こんなの、わざとで、『手』なんだけど、言われて嬉しくて、ずーっと、この女のことを考えてしまう自分がいるのがわかるんだよな、
私、この女とだけは、絶対、オトコの取りあいしない、って、こいつが、おんなが好きなら、おんなの取りあいもしない。
勝てる訳ないからね。
絶対に、ね。
それにね、そのまえにね、私、もしかして、もう、このバッカみたいな『手』に引っかかって、この目の前の女のこと、なんか恥ずかしいくらい好きになってる、
マジで、か?
魔女かよ?