月光。
秋葉竹




蛇が川の上を駆け、
葦の草むらへと向かっている。
冷たい小雨をはじき、
さまよう古代の戦士の亡霊たちとともに。

詩人には見えない明るい涙の笑顔が
誰の読み物をも読めなかった月日を
物語に変えるだろう。

小指に真紅(しんく)の
蛇の紋章刻まれた指輪をはめて
そのユニークな赤色の石を眺める。
どれほど疲れても
疲れなどしらないと言い張る僕の心臓と
ほんとうに疲れなどしらない
無邪気なからっ風が吹くこの心。

光り輝く希望のような静寂の世界からわかれ、
一匹の悲しみが、太陽に向かってユラユラと
這い登るように憧れの空の階段を行こうとするのを、
枝分かれした真摯な熱い意志の鞘に収め、
孵化できない虫の卵と響き渡る愛の歌のAメロを、
眺め聴きながら経てきた幾星霜の夜に殉じてでも
決して忘れる訳にはいかず、
思い出を作る夜の夢をそっと眺めているのだ。

冴えない、疲れきった顔を
戦場の月光に晒しながら。

ふと
どこに逃げればこんな金や銀の時間から
目をそらすことができるのだろうかと、
小さな声で呟いてみる。

名月は、冬の漆黒の宇宙(そら)に
僕を見つめる暗い目をして驚いている。

轟音とどろく、
学ぶべき愛するふたりの怒声とその決着。

蛇が葦の草むらを抜け、
もと来た川の流れへと還ってゆく。
冷たい小雨をはじき、
さまよう古代の戦士の亡霊たちとともに。

守るべき愛するふたりの、過去にない優しさ。

行くべき道ゆく人の、手に負えない優しさに
僕はどの色を僕の色にすれば良いのかを考えて
その砂漠を進む放浪亡霊のひとりとなり、
誰よりも、自分を手に入れたあたたかい
時の過ぎゆくアーケード街を通り抜け
自分を捨て去る時を過ぎても
その物語本を棄てる喪失感に耐えられなくなる。

そばにいる可愛い宝石たちや月光のことが、
この夜の純粋無垢な愛より
重要であるかのように
勘違いをさせられるほどだ。
























自由詩 月光。 Copyright 秋葉竹 2018-04-20 00:00:17
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