滑車
伊藤 大樹

いのちを挽いている
音がする
林檎を剥いたら
もういちど飛べるかもしれない

鳥は
鳥という記号に
耐えているわけではない
人は
人という記号に
耐え続け
そのため
もうながいこと 人には羽がない

なにかを知った、
ということは
なにかを手放した
結果なので
感情が
私の意志から
しだいに剥離していって
みにくい素肌を
日に晒すことになる

私の孤独が焦げて
雲はねむっていた

過ぎた季節のこだまが
私のもとに帰ってくる
金おろし一面に
すりつぶす
一顆の林檎




自由詩 滑車 Copyright 伊藤 大樹 2018-04-19 23:45:47
notebook Home 戻る