アイツ、親指が無いんだって
狩心

席を移動しまーす 前任が死んだから
席を移動しまーす 席が移動するから
席が移動しまーす 乗り物だから
席が移動しまーす 病気だから
咳が移動しまーす 伝染するから
咳を移動しまーす 分離したから
石が移動しますー 無声物だから
石が移動しますー 崩壊してしまった
もはや君の創造は 無生物だから
崩壊してしまった 席が移動します
崩壊してしまった 咳を移動します
崩壊してしまった 石を移動します
乗り物だから 乗れないんですね
そんな堅い意思の 医師の病欠
医師が病欠したから 医師を移動しまーす
石の仮置き場に 医師を移動しまーす
移動された石置き場に 仮を付随しまーす
付随された仮が 移動しまーす
移動しまーす 移動しますが
移動しまーす

病気だから 越えていく
ことができる 崩壊してしまった
伝染病だから 人を遠ざけて
人に乗り移っていく 焼く秒髪だらだら妬けてぽとりぽとりと溶けていく神は紙のように薄っぺらく これからの何事も記載していない 今までの君を定義付けない これからの意思を 病気だから 乗り越えていく

目移りすることはない 目がないから
何事にも 目が乗り移ることはない
憂鬱のシーソーだから 思想を反復しない 反復の中に安らぎや前進を求めない 全身ビカビカで
全ての滑り止め持ってる
キュキュッと 滑り止め検査している
検察官はこの検死を 最後の検死とする
永遠に生きてきた魔女の 全裸の検死で
死んでいる細胞が 生きていることに気が付く
照明が落ちて 闇が証明する
君の善人が死んだから
君は君を越えて検死される
君が君を越えて君は
もはや

雑草が過ぎ去りし日々にゆらゆらと躍り
カメラはその館からズームアウトしていく
点になるまでズームアウトしていく
そこで起きたことは誰にも知られることがないから
君はポスターの中で笑っている
何を見て笑っているのか
誰にも分からないから君は笑って
レストランの片隅で
夜の硝子に反射されながら写って
レストランの証明が落ちる
血の中に落ちる


自由詩 アイツ、親指が無いんだって Copyright 狩心 2018-04-19 02:33:12
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