愛や情けを書けば良いそれは君らの仕事だから
ただのみきや

罪人を眺めている
誰かの腹の中のように風のない夜
迎え火が目蓋の此方
灰に包まれた心臓のよう
ゆっくりと消えて往く
ただ罪人を眺めている
正義については微塵も語らない
なにかを殺し続ける者
触れる者を癒すという
聖人のその影すら注意して踏まないように
地上を流離う者
むしろ聖人が聖人であるために乖離された暗い影のように
血だるまの夕日を背負い
黒々とその身を投げ出した
降り注ぐ石の雨
正義を吠える犬の群れ
飾花された遺体のように
罵倒に埋もれ見えなくなって
ニュースは終わる
ニュースは始まる
正義は聖処女のように罪人を孕む
人類最後の一人まで
そこに奇跡の果実はない
年老いたエバの酸い乳房を咥え泣く者
振り上げられた楽天家の鈍器が
拍手喝采振り下ろされて安堵する所
燻製にされた聖人の遺骨のような
罪人のハミングが耳に降る
血の混じった霙のように好きだったと
頭痛が言う ここから出せと





     《愛や情けを書けば良いそれは君らの仕事だから:2018年4月18日》










自由詩 愛や情けを書けば良いそれは君らの仕事だから Copyright ただのみきや 2018-04-18 21:27:38縦
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