桜の花、ちる
秋葉竹
あの 夜はひとりで寂しくなかった。
ただ、貴女がいないのでとまどった。
どこへいったのかな
さがしてもさがしても
風の音しか聞こえてこない
あたたかい声が夜空から
キラキラふりしきるにぎやかな
貴女の名前を想像していたもので、
ちょっと
僕の想いは伝わらないよねー。
貴女を見上げて星空の下、
首が痛くて涙がでてくる。
ちょっと、星がまぶしすぎて、って、
軽〜いウソつき
桜の花ちる。
悲しい、のではなく、
さがしているだけだからって。
ウソじゃないんだって。
僕が知っているから。
ははは。
どこかに、罪の匂いがするぞ。
あきらめのわるい
孤独な足の影も
地面に縫い付けられているぞ。
そして
寂しくない夜はそんな調子で、
ふだんとかわらない砂時計で時を数え、
ひとつの砂粒も落ちないものとてなく、
ふしぎな夜がふしぎでなくなるとき、
胸を押し潰すというのか、
心臓を握り潰すというのか、
心のガラスを叩き割るというのか、
孤独を真っしろに塗り潰すというのか、
すべてのウソを
あばいてしまう
峻烈なほんとうの声が
からだじゅうの血の底から
聴こえてくるのだ。
なぜ、
ごまかせると信じた?
いったいいつまで
寂しいといってはいけなかった?
桜の花がちり、
もはやこの世界には
夢や狂気で語られるまぼろしごとなど
存在できるはずもないって、
なぜ、
知らないって、ウソをつきつづけたのか、って?
あのね、あのね、
あんなことがあったのならね、
あの 夜はひとりで寂しかった、って
いってもいいんだよ、って。
ほんとだよ、って。