気球のような不思議
秋葉竹



遠い空に漂う
気球のような不思議に問う。


雲の上に立つと
世界が広がってみえますか?

みえないものは、
憎しみの黒い鎖くらいのものですか?

平和がそこには
転がっていて、
どこか悲しげな無謬の雷(いかづち)は
誰を撃つでもなく
ひとつの偽りになる。

あがく昨日の成果もなく
けれど、
絶望がそこには転がっていて、
眼に見えない終わりが優しさぶるから、
そこで大きな苛立つ声が
獲物の
真実の姿をあらわにしてみせるだろう。

どこへも行けず、
「あどけない、あの朝のあたたかな、あなた。」
どこへも連れても行けず、


遠い空の下に
住む罪人たちの未来を見続けて、
黒く引きずった肉体の罪を問い、
どこへも行けない誘(いざな)いが罠だとしても、

わたしはただひとりの、
代わるものなきひとりの人間としての

真実の夢を赤裸々に暴き立てて、
もう、転びまろびそうになりながら、
無反省な一歩を踏み出すのだ。

ほんとうに冷たい心、
今は溶けてなくなっている香りとなって
髪の毛の裏側あたりを漂う。
その悲しみを喰い殺した知性を
どこの、だれにも、わかってもらえず、
夜空に塵芥(ちりあくた)として飾りつけようか、
あたかも煌めく星々の如く。

まるで初恋の淡い想い出のように、
忘れたくても、忘れられなくして。









自由詩 気球のような不思議 Copyright 秋葉竹 2018-04-05 23:09:33
notebook Home 戻る  過去 未来