泣いた文
OMEGA

 文が泣いておりました。
 誰にも読まれず、誰にも気づかれず、誰にも拾ってもらえなかった文は、詩に生まれ変わることもなく、暗がりで泣いて、泣いて、ずぶ濡れになって溶けていくのです。
 悲しみのただ中にある文が、誰にも気づかれなかったのは、暗がりの中で灯りを持たなかったからです。

 いいえ、灯りを与えてもらえなかったのです。

 紙の繊維が、ずるずるとほどけて離れていくと、やがて文字だけが取り残されました。
 文字がじわり、じわり、涙を流しています。


自由詩 泣いた文 Copyright OMEGA 2018-03-31 00:39:39
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