桜の季節
青の群れ
白い光があなたの耳を透かしている
あなたの血管が浮かび上がる
透けた肉は赤く
あなたの心臓はいま動いている
あ、また、つい、なんて凝視しては
なんでもないよと手を握る、握り返す
あたたかい春は生命を浮かび上がらせる
じぶんの心臓の音を意識する
触れる、例えば頬
皮膚をまとった脂肪と筋肉と骨
脳の司令が神経を伝う
鼻水でぐずぐずになっても
皮膚を撫でる桜の花びら
聞こえないけれどぬくもりには音がある
生活の中で透けて見えるものではない
肉体のその中身もきっと
教科書通りの動きをしているのだろうね
眩しいからまばたきをする
鼻を啜って笑い合っている
吸い込んだ酸素が肺を満たして
軽くなった脚を空中に導く
奪う、宿す、繰り返す
出会いがあって別れがあるとか
春の日差しに肉体が熱を持つ
冷えていた指先の温度が人間のようになる
生まれる以外に生きている証明
熱く赤い血肉と