無題
◇レキ
分からないというそれ自体に
ふたをしたら死んでしまうよ
分からないというそれ自体を
叩いたら底が抜けるよ
分からないというそれ自体の
美しい 美しい 上澄みを
猫が小さくなめている
2017/6/28
※
言葉から逃げれない
辻褄を合わせようとすると
逃げてゆくそれ自体がある
泣いている人がいる
何も変わらなくてもこまごまとした日常たちは
簡単に日々を積み立てる
いとも 簡単に 忘れたように
2017/6/11
※
一瞬で切実な感情が叫んでは遠くさらさら溶けて
あの実感も この実感も
嘘だったみたいに僕の見えない一部になる
裂け目から広がってゆく
原色の鮮やかさを忘れたくないのに
2017/6/10
※
心と現実との掴めなさに詩があるなら
表面になんの意味があるだろう
溶けて溶かしてゆけたらいいのに
掴めなさを現実の力に変えて
過去が崩れていってるのだろうか
2017/10/13
※
人は空っぽの
真っ白ペラペラ素材のカラーボールだ
大波小波ざあざあと泣き崩れるように様々に
染め抜いてゆく感情が僕
2018/3/25
※
夏の海辺の町中のにわか雨の夢を見た
寂しくてたまらない
後悔を忘れたいのは惨めな思いになりたくないから
(唯一感情で形作られる僕なのに)
確かに無から生まれる感情は、ただの波だったのさって
大事なもの全部かっさらって腰砕けに散り果てる
寂しくてたまらない
寂しさは一人じゃ生まれない
誰かに会える予感のようなもの
例えば過去に、その消え去った感情に
置き忘れた人がいるのなら
きっと寂しさの様なもの
寂しさもまた、すぐに忘れる
下らなくも綺麗な感情
そんな儚い時間を
閉じ込めれたら
いいのにな
よかったのにな
2018/3/26