夜が明け、朝は来るから。(僕の、桶狭間)
秋葉竹


そして、あのキャンプ場で出会った
囲われた星空の、
子どもたちをぞろぞろと引き連れて
詩の匂い漂うコンクリートで囲われた
夜の無人の街を歩いていく。

「あすなき暗闇の」
キラキラ、キラリ
「乾いた時間の中で」
キララ、キラ
「その眼にうつるものは」
キラ、キラリ
「愛なき生き様だというのか」
キラリ、キラキラ

星の子どもらが、素直に騒いでいる。
眼を凝らしても、ひからびた眼で見る、
あすなき悲しみに、だれも気づかない世界だと。

朝日が映るビルの背に、能面のマネキンの
心で叫んでいる、悲しみがくっきりと焼かれている。

僕に見える夜明けの歌は、
寂しさを連れてオレンジ色に染まり、
僕に見えないしあわせの隠れ家を、
星空の子どもたちに、そっと歌って聴かせている。

ようやく生き始めた嬉びがさやさやと
そんなビルのお墓をやさしく撫でにくる朝。

スクラムを組んだミラクルが、
暖かい日差しを名乗って、
宵越しの金を捨てちまうきっぷの良さで、
サッ、と。
サッ、サッ、と。
街を欲望のうごめく地点へズラしてしまい、
愛のない毎朝のキスは冷たく寂しくても、
日々の暮らしの中では、
なにひとつ問題ではなく、
ただ気にしてもらいたい朝食の目玉焼きは、
硬く、ちょっと茶色い焦げ目がついた
ベーコンつきのヤツでないとイヤなんだ。
その小さいこだわりひとつかかげて
僕の革命戦線にぶち上げる『嫌ッ!』って
自己アピールの旗印とする愚かしさが、
いいね。
それは胸に手を当てて、
もはや、考える時間さえないほど
『嫌ッ!』って言い切る、僕の桶狭間なんだ。







自由詩 夜が明け、朝は来るから。(僕の、桶狭間) Copyright 秋葉竹 2018-03-24 09:30:47
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