下駄の音
服部 剛

僕の部屋の片隅に
久しく再会した
幼稚園の頃の先生が呉れた
ご主人の形見の下駄が
置いてある

夜の部屋で、ひとり
黒い鼻緒の下駄を見ていると
あの大きな背中と共に
からん、ころん、と鳴る音が
何処からか聴こえくる

もはや体の無い人の
形見を履いたこの足は
自らの運命を下駄に預けて
からん、ころん、と鳴り響き
これからどこへゆくだろう  






自由詩 下駄の音 Copyright 服部 剛 2018-03-22 18:06:39
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