トニック・海・季節
ヤスヒロ ハル

あなたの歌声が雪音になって
鼓膜に降り積もるのだ

それは海に降る
空の欠片 星の花弁

わたしはその花が
梅か桃かも知らないけれど
ほころびかけたそれに
波は広がってゆく

あなたは
透明な壁に向かったテノール
雲を千切っては海に舞わせるのに
なんの躊躇もない

空は驚くほど寒いのに
地上は音楽で暖かく光っていて
緊張と緩和が
織物になる

アルペジオは意味もなく
陶酔をもたらし
ボトルシップを浮かべたジントニックが
風と婚姻する


春が来る前に!
雪を溶かさなければならない

春が来る前に!
休符は演奏されなければならない

春が来る前に!
雪に酩酊しなければならない

春が来る前に!
模型は出航しなければならない

堆積するドレミファソラシド
太陽系のドミナントモーション

飽和した心から

今、春が滲んだ


自由詩 トニック・海・季節 Copyright ヤスヒロ ハル 2018-03-21 23:05:02
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