ジャンバラヤ様がやって来る
ブルース瀬戸内

フロム・メキシカン・トゥー・ユー
香りが近づいてきたのが分かるかね
ひれ伏す時間がやってきたのである
ジャンバラヤ様のお通りなのである

感情のひだに浸透する些細な揉め事
先を決めてしまっていた些細な選択
さまざまな些細な事を今一度想起し
変幻自在なジャンバラヤ様の御姿と
比べてみればなんと些細なことかと
些細なことはやっぱり些細なのだと
玉葱のみじん切りのごとく些細だと
パプリカの細切りのごとく些細だと
胸に刻み込んでもらいたいのである

フロム・メキシカン・トゥー・ユー
ジャンバラヤ様がやってきているぞ
セロリだって含まれているのだから
それなりの味がするに決まっている
思想なきものを思想で味付けしても
その味は思想かと言えば違うだろう
宇宙的視座で物事を語ったところで
私たちは星を動かすことはできない

鶏肉の寛容さに騙されてはならない
米の適応能力に甘えることは禁物だ
確かに香りが近づいてきているのだ
ジャンバラヤ様のお通りなのである

なにがしかのレシピにその身を委ね
ジャンバラヤとして乱世に降臨して
糺せぬことを糺し許せぬことを許し
歌のない世に歌をもたらすのである
ジャンジャンバラヤのジャンバラヤ
バラヤバラヤのジャジャジャジャン
心に響くが歌で響かぬは歌にあらず
ライスで奏でるごきげんなナンバー
とくとお聴きいただきたいのである

人生は祭りなのか祭りが人生なのか
ジャンバラヤ様はこう言うであろう
食べる前には何も決めてはならない
迷うこと以外を充足させるのである
良いことを言ってくれるではないか

さあさあついにやって来るのである
ジャンバラヤ様のお通りなのである


自由詩 ジャンバラヤ様がやって来る Copyright ブルース瀬戸内 2018-03-16 12:25:40
notebook Home