遥かなる故郷
ヒヤシンス
流離う人は音も無く、夕日を背負って旅に出る。
影も静かにその人に、別れを告げて消えてゆく。
空には連れ行く雁たちが、山の彼方に飛んでゆく。
母に涙は見せまいと、誓いを立てた若かりし時。
寂れた冬の停車場は、記憶の中で病んでいる。
淡い思い出彼方に去って、路面電車が勇んでる。
過ぎゆく車窓の友となり、逃げる自分に未来はあるか。
白髪頭の向かいの客に、父の面影宙に舞う。
故郷を捨てたあの夜に、短く語る道しるべ。
北へ、北へと歩みは遅く、未だ見ぬ景色の真ん中へ。
ああ、夜汽車は走る、夢に向かってひた走る。
流離う人は訳も無く、ただただ涙が溢れ出す。
さらば故郷、さようなら。
夢と希望を胸に秘め、愛と優しさ、今ここに。