Lean On
もとこ
曇りの日に海へ行った
空も海も灰色なのに
仲介者の努力も虚しく
いまだに和解は成立しない
その国境線は水平で
欠けた世界の端から端までを
頑なに切り分けようとしている
曖昧だが根深いライン
見せかけの直線への固執
アタシは砂浜に座って
ぼんやりとそれを見ている
左横にはアナタがいる
見なくてもそれが分かる
だからアタシは狡猾にも
海風に押されたふりをして
左横にいるアナタへ向かい
ゆっくりと凭れかかる
それに伴い水平のラインも
ゆっくりと傾いていく
それはアナタの肩で
固定化されるはずだった
その角度こそが
アタシにとって
かけがえのない数値
だけどアナタの肩には
いつまでたっても届かない
アタシは恐ろしくて
アナタの実存を確認できない
空と海のラインは
水平から垂直へと
急速に変化している
(それなのに、
(なぜか、
(終わりがこない
(ただ、
(ひたすらに、
(倒れていくだけ
アナタの肩を求めて
アタシは永遠に傾き続ける
それは天国なのか
あるいは地獄なのか
今のアタシには
分からないけれど
きっと生誕の眩暈も
こんな味だったのだろう
そう確信できるほど
静寂の中で
傾き続ける世界は
とても
寂しい匂いがした