星を撃つ
ヤスヒロ ハル

ママは言った
もしも困った事があったらスターシューターにお言い。人の住んでない星をひとつ落としてくれるから。その星が流れている間に願いが叶うように祈るのさ。お祈りが終わったら、報酬の『夜の虹』は必ず支払うんだよ。約束だよ。

ママは言った
あんたも随分大きくなったね。あんたがスターシューターになりたいなんて、わたしゃ嬉しくも恐ろしくもあるよ。あの夜星が落ちた時、そう願ったんだろう?立派なシューターにお成りよ。

ママは言った
あんた、私のためにひとつ星を落としてくれないかい?お願いしたいことがあるのさ。そう、今夜。大丈夫、ちゃんと報酬は支払うさ。娘だからってタダ働きさせたりしやしないよ。頼んだよ。

ママは言った
あんた、ありがとうね。これで安心して天国に行けるよ。今まですまなかったね。私みたいな病人の世話させちゃって。もっといろんな人の願いを叶えたかっただろう?ほら、お代だよ。これで沢山色んな人に希望を見せておやり。あらやだよ、虹が止まらないね。

ママは言った
じゃあ私はいくよ。元気でやるんだよ。あの時のお願いが何かって?言わないよ。でも絶対叶うよ。私は知ってる。だからさ、幸せにね。こっちには、なるべくゆっくり来るんだね。じゃあね。ほら、そんなに泣いちゃ虹がもったいないよ。またね。


自由詩 星を撃つ Copyright ヤスヒロ ハル 2018-02-28 08:43:15
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