三月の花摘み
唐草フウ



もうすぐ日がめくれ
いくつか数えた頃
かの女はバラをたくさん落としてきたが
もうプロポーズされることがなくなったからと
時ごと綿毛に包んで
夏の来ない春に明け渡そうとしている

かの女はいくつかの
いのちのしぶきを
空へと見送った
立派に働いて
でもずっと 何が欲しかったのか
むすめだったころは
薄い手紙を交換するだけで
温かく
解りあえている気がしていたけど
口紅の色は違うのを今は選ぶのだろう
制服の紐はもうとっくに溶けている
たがいに


わたしたちにはまだ
大きな芯がある
でもそれは椿のように
花ごと落ちる日が突然来るかもしれない
きこえのいいものだと思われるけど
それはうつくしいものなの
いつまでも





自由詩 三月の花摘み Copyright 唐草フウ 2018-02-24 03:19:43
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