全く持って、私は嫌になるほど人間である
狩心

私には前提がない
無から突然現れて
一つのルールに乗っかってサーフィンしたら
また無に消えていく
そうであると思いたい
そして年老いた今は
その一つ一つのルールさえも毎回毎回自分で構築している
そのルールは色々な経験と知識に影響されているから
前提があるんだけれども、
そういう因果関係も乗り越えて個性、爆発させたい
他の人と似たような自分の感覚や感情さえも
超新星爆発の一期一会のような今の新しさでありたい
分かるよね
いつもいつも自分の存在意義を問い直し続けている事を
無邪気に感動したいんだ
子供の頃のように
ファンタジックな世界に生きて
ロマンティックな人生を歩む為に
心底美しくある為に、
それ以外の醜さは全て受け入れるし、気にしない
私には前提がない
他の人から見たら恐怖のような存在で、
でも一等星の様にメラメラと燃えている
何一つ整理できないのにエネルギーだけは一人前で
入口も出口もない空間に自力で次元の裂け目を作り出し
空間に束縛されずに異次元ワープしながら
途方もない精神の宇宙を旅している そんなおバカな俺は
考えるよりも先に感じ取り打ち出して
感じ取るよりも先にキョトンと体積もなく存在している
ぷっくりプリティな太りすぎた赤ん坊の様に
スヤスヤと眠っている
全てのものを遮断しても尚、何故か生まれてくるモノがある
人間の生よりも先に存在している宇宙の創造と破壊の
宇宙の存在よりも先にあった そのもの
それを知っている人は全てのものから逃げたくなる
若い頃はその方法を探していたが
そんな方法はないというか、実は既に実現している事を、確信するに至る
そして答えよりも如何に表現するかが全てであると分かり
無秩序である私は表現の中に溺れていく
それは快楽
私はシステム
装置である事を望んで来たが
何故だかそれも
居心地が悪い

赤い桟橋に 下駄と着物と唐傘持って
踊って見せて、 桟橋の手すりの上にバランス取りながらふらふらと立って
原始時代の言葉をしゃべる、 君は僕をじっと見つめてニコッと笑って
100年後に流行るブレイクロボットダンスで体ブルブルさせながら僕に迫る
格好いいとか可愛いとかを飛び越えてそれはむしろダサい、というか若干怖い
というか全てひっくるめて笑ってしまう
そこには一点の迷いもなく、美しい紅葉に包まれている
僕がバランスを崩して荒れ狂う川に落ちそうになると
君は赤い糸を引っ張って僕の体重を支える
桟橋の手すりの上で、斜めに傾いた僕を
君は心配そうな顔で安心して微笑む
僕は阿修羅の様に顔を切り替えて、君の微笑みは爆笑へと加速する
君は傾いて回転して糸を巻き取る
竜巻に呑まれた二人はヘリコプターみたいに空に上がって
元居た自分達の居場所を俯瞰で見る、僕とそっくりな人が桟橋に現れて
二人は安心して空中で爆発して消える

夜、山奥で焚火の傍で
ハンモックを揺らしている
子供がいない僕らは、自分の中にいる子供をいつもあやしている
交代交代で親と子になって自らの想像力と寂しさを消火している
静かに燃え出のはいつも自分達の外側にある焚火だけ
焚火の不規則性を真似ようとするが到底真似できない
だから焚火が愛おしくて堪らない
僕らは焚火を消す時に号泣する
一つの命を奪うのと
山火事になって沢山の命が失われるのを
天秤に掛けることができなくて

僕らの中はいつも爆音で爆撃
大きな湖の真ん中にぽつんと浮かぶ小島に行く為に
湖の中に身を浸していく
二人とも酸素ボンベとダイバースーツ着用で
二人だけの深海は酷く澄んでいて
生き物たちの吐息を今ここで二人で独占してみる
身も心も酸素ボンベもダイバースーツも未知に溶けて水となり、
やがて小島に流れ着く
小さなハゼになった二人は
優しい泥の中を必死に飛び跳ねていく
進化論は嘘だけど、その嘘をもう一回やり直してみるかい?
もう死んで居なくなったはずの僕らの先祖達の無数の手が
ハゼの僕らを優しく包み込んで
腐って朽ち果てた廃墟のログハウス
そこにある割れた水のない水槽にぽつんと僕らを置く
僕たちはわんわん泣いて
水槽を塩水で満たし、
割れた隙間からドンドンと塩水は流れ出てしまうけどお構いなしで
朽ち果てたログハウス
その魂達と会話している

僕たちは何故
生まれてしまったのだろう
凍えそうな冬の大自然で
君の温もりだけが信じられる
僕はこの宇宙が怖い
またここに来ようと呟いて、
でもきっと二度とここには来ないだろう
僕達の記憶は弱くて
今も未来も支え切れない
ハイテクの空飛ぶ車で小島から飛び去る
その時代のエンジン音と照明だけが力強く生きていて
僕達の魂は何度も幾つもの町へと落下していく
僕達は何度死ねばいいんだろう
滑空すればするほど無に近づいて行き
我を失っていく僕らは
その為に生まれてきたのだと確信している

二人とも気が狂って心中するのが望みだとしたら
誰がそれを否定できるだろう
そう僕が語ると
君はそんなのは嫌だと言って
可愛いお爺ちゃんとお婆ちゃんになって
手を繋いで歩くのが夢だと言う

君だけが僕の間違いを否定できる
だから僕は君が好きだ


自由詩 全く持って、私は嫌になるほど人間である Copyright 狩心 2018-02-22 14:44:03
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