Alpha
もとこ
生まれる前の闇に
ぽつ、ぽつぅんと
浮かんでいる
光の結晶たち
(すっかり消費されてしまったね)
アタシの葉脈を
衛星軌道上から観察した彼が
火曜日の声で呟く
(きっと
約束は空を飛べないだろう)
半額になったアタシの
緑の指に口づけをして
かつての密告者たちと
同じ背中を見せながら
彼も遺跡へ旅立つのだ
(アタシは座標になりたかった)
黄ばんだ契約書を
暖炉の火に投げ込んで
壊れたように繰り返す
誕生の瞬間の声で
何度も繰り返されてきた
(始まりの前からずっと)
そして繰り返されていく
(終わりの後もきっと)
いつしか風が止み
獣たちの影が
静かに横切る夜明け
に
寂しい、と
口にしたら
消えてしまう結晶たちが
アタシの中で
そっと
光りはじめる