さびしさを
こたきひろし
さびしさを一個に丸め
見えない屑入れめがけて放り投げた
その度に外れる
さびしさは埃のように立ち上ってくるから
毛玉のようにまとわりついてくるから
いっぱいになって辛くなったら
コロコロで集めよう
私の心臓はか弱い肉の塊
その仕組みに井戸を連想してしまうのは
なぜだろう
始まりからお仕舞いまで
絶え間なく汲み上げなくてはならない
その手には時間が絡み付いて
ほどけない
過去に時計を戻せば
そこにも深い井戸があって底を覗きこむ
私がいた
私の根源は井戸から沸き上がるさびしさだから
払い除けられない
井戸の側には柿の木があって
季節には身が熟して落ちた
その甘く爛れた匂いが
私の心象風景には
似合っている
のかも知れない