何かが違うと叫んでる
その扉は意図もたやすく開いて
あの時みたいに誰か
一瞬叫んだ
瞬きすれば消えてしまうくらいの一瞬だった
力づくで痛みは消された
無味に生きるの
たき火が降る雪を溶かすくらいの一瞬だった
※
沢山のすれすれをさまよいながら
からからと心の隙間風 風車は回ります
沢山の歯がゆさに耐えながら
諦めの淵の小枝に咲く ぽきりと心を折ります
何ともなかったようにほら
生きることはいつだって
崖っぷちで暇を潰すようなもの
※
心がぱらぱらと
降る雪に
鮮やかに色をつけたがっても
いいえ
陶酔に意味がない、と
ただ下らなく雪が降ってる
せっかく白いのにね
※
僕は忘れよう
元気なんかない事を
眠くてしょうがない事を
自信なんかない事を
透ける相手の思いを
ありたい自分が分からないことを
偏りの不格好さを
主張のもろさを
日々を過ごすために
地に落ちた歯車が朽ちてゆくから
僕は忘れよう
それも
※
死にたくないのに
生きる努力を怠ると言う
怠りながら生きようとする僕
しゃべる しゃべる
分からなくなる
※
大人ってドロドロした後悔と
それを諦め続けるってことなのでしょうか
※
なぜ満足したっていいはずなのに
何もないような虚脱感なのでしょうか
※
生き物らしく自分を発露させながら在ることは
結局支配や蹂躙でしかありえないのでしょうか
※
なぜ誰かを見下すことでしか
幸せを感じれないのでしょうか
※
見下すことや
支配や
蹂躙を
なぜ僕は醜いと切り捨ててしまうのでしょうか
それでは楽しくなれないじゃないか
生き物らしくあることが
生きているという感覚を摑ませたり
意味があり、充実していると思わせてくれるのに
※
受動的な苦しさ例えば
一寸先が闇だったりとか
目指すもののない虚しさとかを
目一杯受けることで
傷つくことで
日々ただ過ぎてゆく生活を
美しいと納得することにして
目をつぶりながら笑います
※
無題(惨め)
僕じゃなくてもいい人が
僕に近づいてくる
しばらく心を交換し合おうなんて笑って僕の心を食い荒らしてゆく
そうしてからチクッと小指でとても解けない難問をいたずらっぽく放って
最初からいなかったように去ってゆく
解決は忘れた 心の調達をしに来たのかなあ
ここには沢山の色があふれてるから
ほら
さらさらの僕の心
あっけらかんに晴れた空に漂わるのさ
そうするとまるで僕が
綺麗に見えるから
※
正しい心の守り方(正しい心の殺し方)
1
きらきらの
寒い朝日に透かされた
舞ってる綺麗な結晶は
心の何よりの外敵です。なぜなら感受性は心を割るからです
そういう類のものがある場所は避けましょう
生きる事において感受性は優先順位が低いのです
2
できるなら真昼間の誰もいないような公園がよいでしょう
可能ならへにゃへにゃと笑いましょう
3
ぐちゃぐちゃとした世間が
私が忘れ物をするたびに
取りこぼした人間関係や
もっとうまくいったはずの物事を
私に思い出させ、正しい方向に向かせてくれようとして
熱い粘度のある黒々とした熱湯を
沢山用意してくれます。飲みましょう
必要に応じて、臨機応変にその忘れ物を回収するために
丁寧に飲み下すのはよしましょう
肝心なのは諦めです
全部何も考えずに飲みましょう
最初は臓腑がかっかと熱くなり
もんどりうってでも忘れ物の回収に向かいたくなりますが
それはつまり心が砕かれて生きる力が砕かれた隙間からにじみ出ていると言う事です
たくさん、それも何も考えずに飲めば
もんどりうつこともなくなり回収も簡単に諦めるようになります
そのうち慣れます
慣れるまで毎日のように繰り返し飲み下しましょう
4
すると…ほら
こんなに軽やかな心!こんなにどうでもいいなんて!
これはつまり
生きるスイッチをOFFにするということなのです
しかし不思議な事にOFFにしても生きています。まあ今のところは
そう!生きているのです!
ただこうして無機的に生活しましょう
心穏やかに軽やかに…
5
試しに心を取り出してみましょう
なんとキレーなハート型でございましょうか
ほれぼれとしますね!
小麦粉をまぶしてみても
まったく染みず
吹きっさらしの青空に透かせば
風は、心に侵食しようとしてくるもろもろを
簡単に吹き飛ばしてくれます
心は誰の事にも耳をかしません
なぜならどうでもよくなってしまったのですから!
涙も後悔も願望も
失敗から学ぶべきあるべき道筋もあり方も
世界の美しさも
どれだけこぼし、忘れ続けても構いはしません
なぜならもうそこまでくれば誰もそれに気づかないからです
涙も後悔も願望も
失敗から学ぶべきあるべき道筋もあり方も
世界の美しさも
これらは心の安寧をゴールに持つのです
心はすでに安らいでいます!
そう感情を忘れ続けましょう!
以上心の守り方でした
※
正しい希望の仕方(正しい絶望の仕方)
1
感情の泡を均一に伸ばして真っ黒になるまで自分の中で腐らせます
ふわふわの廃油がメレンゲ状になるまで貧乏ゆすりを繰り返します=A
2
くらくらと簡単に変わってゆく切実が俎板で飛び跳ねるのを強引に抑えて包丁で頭を落とします。それが美しいとしても、忘れてしまっても差し支えないことばかりだからです。どうせ。
分厚い下唇の乾燥ではがれた皮膚を丁寧に取り除き、せめてもと、じんわりと血の匂いを楽しみましょう。支離滅裂ですが。その頭で出汁を取ります。
3
内臓を取り除きます。いりません。完成に必要なのは嘘だからです。
4
律儀に両手に包丁をもってなます切りにします。かわいいチワワの様な無垢な瞳で行なうとなおよいでしょう。そのくらいが逆に丁度いいです。=B
5
個々人の持つ予防線ぶっちぎってプルプルコラーゲンがぶ飲みしてみましょう。意味のない表面的なごっこ遊びの偽りの美しくない真似事ばかりの下らない所作があらまあ、と肺気胸起こした肺の右下あたりからこんにちはするはずです。そいつを素早くつかみ取って、そのまま-4000度を超えてゆく虚無が沸騰する鍋にそっと入れて素揚げにします。
6
5分もすればいい色に上がります。イカゲソです。マヨネーズたっぷりかけてごまかします。=C
7
必要以上に着込んだまま寒い夜空をお散歩しましょう。下を向いて明日の事でも考えれば、簡単に悲しみを外気から蒸留できます。その鋭い粒子を真空管に入れてチンしましょう。少しでいいです。
8
その粒子が目に見えて膜のように張り付いてきたら取り出します。湯葉です。無味無臭生きる事になんにもつながりません。何に染まるか分かったものじゃないので千切りにしてとりあえず再び外気に触れないようにラップで包んでおきます。=D
9
無意味に明るいふりした明日を菜箸でつまみます。繰り返しつまみます。なんだか意味がある気がしたりして、元気になったふりをしましょう。主食が出来上がります。麺です。縮れ麺です。=F
10
大きな器に寄生しながら、Fを何様のつもりで元気に明るくはきはきと中央に入れます。頭で取った出汁を注ぎます。出汁の美しい色はどうせ現実では偽物と称されるので、Aを入れて現実に馴染ませましょう。混ぜなくともAは簡単にこの料理の根幹になり、具材全てを灰色にしてくれます。盛り付けは適当でいいです。中身など誰も見やしないから。イカゲソを汁に半分浸らせて浮かせるように盛り付けましょう。マヨネーズがいい感じに油となって汁に漂えばなおよいでしょう。
11
最後にどうしても必要なのは無駄と言われることに無駄な力を入れる事です。無駄で骨折り損ですが仕方がないです。それがこの料理の最後の評価を決定づけさせます。感情は出口を失っても、どこかで現れるものだから。そのうまい出口の失い方ができる人ほど、湯葉はとげとげしく固化して都合の悪い人間にだけうまい事歯茎に突き刺さってくれる毒になるでしょう。自身を生かす術になるでしょう。
以上正しい希望の仕方でした。