白と白
木立 悟
空飛ぶ家の 群れのなかに棲み
扉から一歩を踏み出せずに
眼下にひろがる風と原
飛び交う家々を見つめていた
街 クレーター 街
人と原は円く分けられ
薄い緑に吹かれていた
ただ音も無く吹かれていた
転がりつづける輪が
道を外れ海へ飛び出し
何も無い場所へ向かおうとするとき
ふと後ろを振り返ると
道には無数の影が浮き沈みしていた
ミルクとウォッカで 赤い絨毯に
文字を書こうとして上手くいかず
窓の外をすぎる緑
傾く景を見つめていた
痛みを伴う火傷の夢から
ようやく逃れた夕暮れに
空も地も見えないほどの雪
飛ぶ家を少し重くしていた