ダフネー3
本田憲嵩

君という樹木の体幹
透明な空気がその間隙を吹き抜ける
この心地よい冷ややかさは 澄んだ水面の白影を揺らす
逆さまに曝される 流線型の細ながい肢体 その後ろ影
そよぐ枝葉のように質感のある濡れた黒髪に 水の星星は灯る
うっとりと揺蕩うように誘いながら
水の断面もまたその月影宿した球根型の見事な臀部に
どこまでもどこまでも纏わりついてゆく
やがて辿りつくその股間の狭い川のまわりには
陰毛の換わりに粘性の暗い苔がびっしりと繁茂していて
むしろ此処 この黒い湿原に分け入る細ながい川 この夜の奥の奥そのものこそ
 が
彼女の毛深い陰部そのものである
湿原の咽せ返るような芳香を濃い霧として
銀の月はその神秘のヴェールを棚引かせてゆく



自由詩 ダフネー3 Copyright 本田憲嵩 2018-02-01 01:27:04
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