夜明け前
ヒヤシンス

 月明かりに照らされた夜の花は青く霞んでいた。
 虚無を抱えた若者の奏でるピアノは枯れている。
 長い歴史の中で誰かが落としていった休符は
 どこかの枯山水に配置された石のように儚い。

 そんな儚い夢の中で、老人は静かに去ってゆき、
 若者は年老いて、子供は成長する。
 新たな若者は楽譜に忠実であるとは限らない。
 若さは既成概念を破壊し、未開の領域でアドリブする。

 脳みそが委縮する恐ろしさ。
 若さを受け止めきれない傲慢さ。
 すべては休符の中の儚い思い。

 花咲く前の赤い蕾が静かに燃えている。
 上弦の月が奏でる薄笑いはどうだ?
 明け切らない夜の中で花は青く霞んでいる。
 
 


自由詩 夜明け前 Copyright ヒヤシンス 2018-01-27 06:21:16
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