夜明け前
ヒヤシンス
月明かりに照らされた夜の花は青く霞んでいた。
虚無を抱えた若者の奏でるピアノは枯れている。
長い歴史の中で誰かが落としていった休符は
どこかの枯山水に配置された石のように儚い。
そんな儚い夢の中で、老人は静かに去ってゆき、
若者は年老いて、子供は成長する。
新たな若者は楽譜に忠実であるとは限らない。
若さは既成概念を破壊し、未開の領域でアドリブする。
脳みそが委縮する恐ろしさ。
若さを受け止めきれない傲慢さ。
すべては休符の中の儚い思い。
花咲く前の赤い蕾が静かに燃えている。
上弦の月が奏でる薄笑いはどうだ?
明け切らない夜の中で花は青く霞んでいる。