トウキョウ、ニジュウイチジ頃
坂本瞳子

トウキョウの地下鉄
改札口の近く
ニジュウイチジを少し
過ぎた頃

会社を定時にあがって
少し急いで駆け込んだ
晩御飯も食べずに見た
映画は大して面白くなかった

なんとなく晴れないキモチ
長い地下道は人もまばら
前方から聞こえた「キャア」
そして立ち止まる女性

足元を駆け抜けていく
大きなネズミが二匹
ええ確かにこの都会で
普段は見かけないけれど

おおよそ想像するネズミは
もう少し小さいはずで
黒光りさえしそうだけれど
俊敏に駆け抜けていけばいいものを

薄汚れた茶色い二個の塊は
互いに飛びつき小突き合い
その獰猛さを露呈しては
通行人の心を不快感で充たした

トウキョウの地下道
ニジュウイチジを過ぎた頃
独り歩きなどするもんじゃない
獰猛な小動物に抗う術を

知らないならば
早く家へ帰ればいい
ツマラナイ気持ちは
映画を見ても拭えはしない


自由詩 トウキョウ、ニジュウイチジ頃 Copyright 坂本瞳子 2018-01-19 00:14:46
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