韻降る
中村 くらげ

ここは自由の部屋
障子の向こうからはこどもの声
明日が待ち遠しかった昨日
明日をうっとおしく思っている今日
ずっと温かいままの布団の中で
こんぴゅうたあに触れている指先だけが冷たい
定刻にやってくる食事たちを水で流し込み
げっぷを世に放つだけの簡単な仕事だ

ここは隔離された部屋
こっちにおいでよかわいい我が子たち
何でもできる気がしていた昨日
何にもやることがなくなった今日
うつるから近寄らないで!なんて言われちゃって
顔も見せてくれない家族たちは冷たい
カプセルと錠剤を一度に水で流し込み
病原菌を撒き散らすだけの役立たずだ



ここは韻の降る部屋
もとい隔離されたインフルの部屋

うまい言葉だなんて出て来やしない
ネットショッピングくらいしか出来やしない

そこで鳴りだすインターホン
だれかお見舞いにでも来たの?


あっ、クロネコヤマトさん ご苦労様です


自由詩 韻降る Copyright 中村 くらげ 2018-01-18 15:46:25
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