裸木
葉leaf



春へと分け入っていく冬の先端で
裸木は枝の隅々まで停止している
やがて訪れる明確な死までに
なすべきことを緻密に逆算している
樹皮は乾き葉は落ちた
肉体の老いが彫られたようにむき出しで
裸木はこれから虚無へと拡散する
一生をかけて追究した哲学的課題に
残りの人生を集中させて果てる
裸木の哲学は誰とも共有できない
だが裸木の人生ですら誰とも共有できない
この地には地震があり放射性物質が降った
裸木はその事実を生活し尽くして
ただ冬の終了とともに倒れるだろう
誰にも何も遺さずに
すべてを孤独に抱え込んで
その激しい孤独で放射線も焼き尽くすのだ


自由詩 裸木 Copyright 葉leaf 2018-01-08 10:55:20
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