がらくたライブ
吉岡ペペロ
俺前後の年代の夫婦率が高かった
桑田佳祐のコンサート
ダメもとで申し込んだら当たった
一人エントリーが競争を回避したのかも
京セラドームはひとひとひと
開演まであと20分
会場にたぶん桑田が選んだムード歌謡曲や
ジャズボーカルやR&B、ロックが流れている
40年間小学生の時分から
ファンクラブには入っていないファンをやってきた
アルバムのサザンと呼ばれていた頃から
アルバムはぜんぶ買って持っている
定刻ぴったりにライブは始まった
両隣もまえも後ろもその斜めも
子育てを終えようとしているような夫婦ばっかり
かれらの加齢臭は俺からもしているだろうか
ライヴにはなんとも言えない桑田佳祐の人柄のよさがあふれていた
かれの61才という年齢はなにを意味するのだろうか
歌は新しいアルバムの曲がほとんどだった
あたりまえのはなし最新の年輪はいつも若い
樹齢300年でもそうだ
それに音楽は目には見えない
目には見えないから時空はない
だから過去も今も未来もパラレルワールドもない
ないというかある
みんなある
過去も今も未来もパラレルワールドもある
それが桑田佳祐となって俺の今にあるだけだ
表情やこまかいしぐさが分からない桑田佳祐が
兵庫駅から俺の会社までの距離くらいのところで歌っている
みっつの大画面でも桑田佳祐がでかでかと歌っている
それらを四万人が見ている
ファン歴みたいな時間的感慨はまるでなかった
俺と桑田佳祐の
あったかも知れない、なかったかも知れない距離的差異を
2時間40分俺はただただ見つめていた