絶望の角度
草野大悟2

 穏やかな秋晴れの日に、絶望の角度を測っていた。
「その角度は、希望だ。死に至る病だ。間違いない」
昂然と、苦渋に満ちた青白い顔を上げて叫ぶ男が近づいてきた。

── おかしな事を言う。
    あなたは確か、「絶望は死に至る病」と言ったのではなかったか。
  
 絶望の角度が百六十度を超えると希望と呼ばれるようになるんだ。
 そして、そこから二十度右回転して直線になると、あとはひたすら絶望の中を漂う。

── つまり?

 つまり、三百六十度の宇宙の中で咲きほこる希望は二十度の愛だ。
それ以外は絶望という闇ということだ。

── わけがわかりませんけど…
 
 分かる必要もないし、分かるはずもない。
 
── どういうことですか?

 つまり

── つまり?

 そういうことだ。

───えっ?

 だから、そういうことだ。
 今言ったことが真理という実態の全てなのだ。

───へー、そうなんですか。

 そうだ。

ぼくは思わず、分度器を床に叩きつけた。 


自由詩 絶望の角度 Copyright 草野大悟2 2017-12-10 08:46:33
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