或いは家族
本木はじめ
ホメロスを読まばや春の「意味わからん」次女と末っ子はしゃぐ春の陽
カレンダー裏紙争奪戦前夜予定調和に微笑む妻か
近付くなオーラを放つ長女その幼きころの写真の笑顔
お料理の手伝い毎日してる次女救急箱を踏み台にして
卵から双子の黄身が出たらしいイヤホン越えて届く歓声
注ぎ足せど注ぎ足せどなおぬるいまま三人姉妹の時間差お風呂
知らぬ間に修学旅行へ行っていた長女の椅子ではしゃぐ末っ子
末っ子に成りたいものを問えば「駐車場」と応える冬の難問
澄んだ目に映る自分も澄んだ目に父母を映していたのだろうか
遠き日の長女の作文「しんぴんのくつはめちやくちゃしんぴんでした」
末っ子のうまく言葉に出来なくて癇癪起こす詩作にも似て
「ゆひら」ではなくて「星だ!」と騒ぐ次女雪のことかと思えば氷菓
ファンヒーター「延長ボタン」争奪戦誰が押しても誰かが泣いて
やや長きキスを交わして帰りくる娘を思う自分を思う
ねがはくは花のもとにて春死なむ或いは家族に見守られつつ