太陽は病んでいる
ただのみきや

口紅をつけた
自分のか誰のかわからない血の赤
すると足元が浮ついて
堕ちた天使のよう爪先で滑るから
慎ましく知的 胸元に
悶えに悶えた腹を割いて取り出した
真珠ひとつ
それでも世界は殺風景で
視線は蝶のように賽の河原をさまよった
だから背中一面
極彩色のタトゥー鳥や蛇やカエル
密林のネオン 窓のない顔
拷問台の上のファッションショー
満足? ――否 まだ足りない!
影の境の曖昧をナイフで傷つけて
待つ――凝固して濁るのを
鏡を覗くといつも後姿が映った
放り上げたピーナッツは口の中――運命は
砒素を固めた宝石それとも
抜いたばかりの他人の奥歯
誰かの脳を掻き回した弾丸か
鈍色の違和が
ゆっくりと
暗黙に溶けて広がって往く
いつもの左右踵の高さの違う靴を前に
ある日スッパリ三分の一
思考が切り取られ宙から闇が入る 
頭上で風呂敷が結ばれたみたいに
剣山の上に立たされて
花鋏で切り落とされる
野の花のようだと自分を思うそんな
薄気味悪い眼差しが
後から後から糸を引いていた
今朝やたらとエゾリスが
木々を駆け下り駆け上る
太陽は白くぼやけていて
サナトリウムの時計




        《太陽は病んでいる:2017年12月2日》










自由詩 太陽は病んでいる Copyright ただのみきや 2017-12-02 15:49:04
notebook Home 戻る