ツミキ
狩心

積んで
形を作る
崩しては組み替えて
別の形を作る
限界が来たら
新しい形のツミキを一つ足す

嫌になったら
全てのツミキを
部屋の壁にブン投げて
玄関から飛び出していく

町で人と話す
話題は大抵ツミキかカラダの話だ
カラダの話をする相手を探す
一緒にお道化て全部忘れる

カラダを失った状態で帰宅する
床に散らばっているツミキたちを拾う
ツミキを足していくのではなく
減らしていく事を考える
ツミキを足していくのではなく
削って変形させる事を考える
色を塗る事を考えてみる
燃やしてみる
濡らしてみる
手で握り潰して
血だらけになって
食べて排泄してみる
血だらけになって
生臭い匂いで嫌になる
ふて寝する

朝起きて
ヤスリを使って途方もない時間を掛けて
全てのツミキを粉末にして
窓から空に撒いた

カラダが変形していく
ツミキのように固く
角と辺と面と体積を携えて
体が硬く変形していく
私が一つのツミキになってしまう
恐ろしくなって玄関から飛び出していく

町を走りながら
少しずつどんどんとツミキに変貌していく
今まで気にも掛けなかった道端の小石に目が行く
私はハッとして
灰色に色付く
パン

風船が割れるような音がして
視線が一気に低くなって
地面すれすれの目線になる

・・・ 巨人が沢山いる

私は身動きが全く出来ない事に気付く
ただただ巨人を眺めては
彼らは一体何を思い
何をしているのだろうと
物思いにふける

誰かが私を拾って持ち帰る事は
きっと何十年に一度しか訪れないだろう

私は気がおかしくならないように
必死に
心を強く
持とうとした

何百年という時が過ぎ
ついに人類は居なくなった
バン

小石が砕けるような音がして
視線が一気に高くなる

カラダを取り戻した私は
その喜びに涙した

たった一人
砂漠の上に立っている
私という存在に
一体どういう使命が宿されているのか
目を閉じて
考えずには居られなかった

数時間後に目を開けると
何の変哲もない見慣れた町の中に立っていた
人がいる
ただそれだけで胸が熱くなった

そんな体験をしたと
愛する人に打ち明けたら
少し微笑んで
静かに
抱いてくれた

私は震えている


自由詩 ツミキ Copyright 狩心 2017-12-01 13:02:17
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