また少し背が伸びた気がして
カマキリ



感情が入り混じって危険になったら
ただ早足でバッティングセンターに行く
やる気のない店員のタバコふかしながらされた挨拶も
今は見えていない


コインを入れて
120Kmで30球繰り出される人生の浮き沈みを
ぼくはじっと見つめながら
適切なタイミング(そう願っている)で金属バットを振る
叩きつけて、振り遅れて、見逃して、苦笑いして


打席には散漫と嫌な考えが転がっている
打ち据えても打ち据えても
コロコロと軌道を変えて笑ってくる
手に残る衝撃はそれが夢ではないとはっきり教えてくれて
いっそすがすがしい気持ちなんだ

ふわっとしたカーブをひっかけて
ぐんぐん伸びる打球は天井のネットに吸い込まれる
最後にぼくは姿勢を正してもう一度構え直す
暗い穴からの一閃を見るために

高いストレートは空振りだった
ボタンを一個外してタバコに火をつければ
また少し背が伸びた気がして
吐いた煙がバッティングセンターの明かりに消えていった


自由詩 また少し背が伸びた気がして Copyright カマキリ 2017-11-27 22:57:08
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