座席の荷物は社会のお荷物
イオン
そのバスは込んでいた
しかし、その女性は
隣の空席に紙袋を置いて
占領したままだ
バスが大きく揺れた後
初老の男性が無言のまま
その女性の紙袋を
通路に降ろして席に座った
その女性は驚いて
回りを見渡したが
誰もが無視していた
次にバスが大きく揺れると
通路の紙袋が転がり
荷物が散乱したが
誰もが無視した
女性はすいませんと言って
席を立とうとしたが
初老の男性は席を立たず
走行中ですとだけ言った
女性は降車ボタンを押した
誰も降りる人がいなかったバス停に
バスが止まり初老の男性が席を立った
女性は通路の荷物を拾って
吊り革につかまってそっぽを向いた
バスの運転手が降りる人はいませんかと
アナウンスして女性をにらんだ
運転手は声のトーンを下げて
ボタンを押した方は降りてくださいと告げた
女性は慌ててバスを降りた