木枯らしが吹く前
坂本瞳子
空気の冷たさは
ただそれだけのことで
なんの期待も
後悔をも振りまくことはなく
消えることもない
あの日の涙は
嬉しかったのか
悲しかったのか
知るよしもないけれど
滴の記憶は
いまもまだ
宙に浮いたまま
後ろを振り向くことも
前に進むこともできず
もう少し想い出に浸っていようと
自らを慰めて
秋の夕暮れを過ごす
自由詩
木枯らしが吹く前
Copyright
坂本瞳子
2017-10-28 10:47:24